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虎ノ門プロジェクト レポート PR業界の異端児に訊く、ブランド戦略としての大規模イベント

PR Table 取締役 菅原弘暁氏

各業界でイノベーションが進む今、業界を牽引しようとする主体的な企業が、特定のテーマを未来志向で語らうカンファレンスを開催するケースが少なくありません。2018年11月に、虎ノ門ヒルズフォーラムを会場に行われた「PR3.0 Conference(PR3.0 カンファレンス)」を主催したのも、PR業界の大手ではなく当時創業4年目のスタートアップでした。主催者であるPR Tableの取締役・菅原弘暁さんに、PR3.0カンファレンスの狙いや、会場として虎ノ門ヒルズを選んだ理由、そして大規模イベント開催のブランディング的な意味などについて伺いました。

「PR3.0 カンファレンス」とはどういったイベントでしょうか? そもそも「PR3.0」とは何を意味するのでしょう?

かつてPR(Public Relations)といえば、主に企業の広報部が司っていましたが、10年ほど前からマーケティング部も関わることが増えてきました。情報社会の変化に沿うように、PR1.0からPR2.0へと進化したのです。そして今、人事・採用担当の部署・人にもPRの考え方は普及し、PRという概念を担当するプレーヤーがどんどん広がっています。私たちは、PRを取り巻く現在の社会環境に着目し、PRの未来を考えるための場を設けたいと考え、「PR3.0」と銘打った本カンファレンスを開催することにしました。

未来を語るためのカンファレンスを開催するうえで、幾つか注意した点があります。まず1つ目は、参加者の多様性が絶対欠かせないということ。たとえば参加者が男性だけでも、同年代だけでも、あるいは経営者だけでもダメということです。多様な価値観がぶつかり合わないと、未来は生まれません。ですから登壇者も、経営者から現場の担当者、大学の先生、メディア関係者など、多様なバックグラウンドを持つ方々にご依頼しました。

また、登壇者だけでなく参加者間での議論を喚起するために、基調講演以外はすべてセッション方式にし、セッションのゴールも事前に決めませんでした。予定調和ではなく、むしろ不協和音が生まれるような状況をあえて演出して、参加者にも当事者として脳に汗をかいてもらう構成にしたんです。

ノウハウを得て満足して帰るだけ、そんな来場者は生み出したくなかった。せっかく場所と時間を共有するわけですから、膨大な熱量を浴び、自分自身が参加することで、それぞれの現状に対してより強い問題意識や課題感を持ってもらうことが成功だと定義していたんです。

実際に、カンファレンスによって湧き起こる熱量は感じ取れました。カンファレンス開催中に「PR3.0」関連のキーワードが複数、ツイッターのトレンド入りしましたし、カンファレンス後に登壇者の方、参加者の方から「次も参加したい」というフィードバックをたくさんいただけました。2019〜2020年は、「PRパーソンの新しい武器」をテーマにしたPR3.0カンファレンスを計5回にわたり開催予定です。

PRの未来を考えるために、カンファレンスという手法を選択したのはなぜでしょう?

個人の発信力が増した結果、企業と個人の関係性にも変化が生じ、その時代背景を捉えたPRが必要になっていると言えます。企業は本来複雑で、特定部署だけに効果的な解決策では不十分であるため、企業と個人の間に新しい関係性を構築し、1つの活動を通じて多様な関係者をドミノのようにつなげていく ――そんなゴールを見据えることが必要になっています。そうしたムーブメントやビジョンを総称した「PR3.0」といううねりを揺り動かしていくために、カンファレンスという手法がマッチすると思いました。

また、PR Tableが渋谷のスタートアップから全国的なSaaS企業へとジャンプアップしていくにあたり、桁違いの仕掛けが必要だったのも事実です。現に、投資家からも「大きなムーブメントを創れ」というアドバイスをもらっていました。くわえて私たちは、PRという概念を拡張する、そんな議論をしたくて起業したというルーツもありましたから、その意味でもオープンなカンファレンスという形態は相性が良かったのです。

ただし、スタートアップ企業が自社の説明やサービス紹介をするだけのイベントに何百人も集まるはずがありません。だからこそ、PR の可能性を切り拓くPR3.0カンファレンスという大きな旗を立てることが必要だったんです。

虎ノ門はステージを変えたいスタートアップにとって
登竜門的なエリアになり得る

開催場所を、虎ノ門ヒルズにした決め手を教えてください。また、虎ノ門での大規模イベントのブランディング的な意味とは?

カンファレンスの内容が固まる前から、1000人以上の、誰もが知るような一線級の場所で実施することを決めていました。ムーブメントを起こす前提として、そうした場所選びが必要だと考えていたからです。

PR Tableが本気でカンファレンスに挑むことを社内外に示しつつ、大手広告代理店が主導するマーケティング界隈からも注目を集めることのできる場所はどこなのか。そんなときに見つけたのが虎ノ門ヒルズでした。スタートアップといえば渋谷がある西サイド、大企業が集結するビジネスエリアといえば丸の内がある東サイド、そんな図式のなかで、虎ノ門はちょうど中間に位置するポジションです。虎ノ門ヒルズフォーラムを見たとき、今まさに変化の途上にあり、これから作り上げていくPR Tableが大規模イベントに挑む場所としてピンとくるものがあったんです。

渋谷や六本木で産声を上げたスタートアップがステージを変えて東サイドに攻め上がっていく、そしてその覚悟を決めるという意味で、登竜門としての象徴的なエリアになっていく。虎ノ門エリアには、その大きなポテンシャルがあると感じています。PR 3.0カンファレンスを終えてみて、その思いはより一層強くなりました。

ブランド戦略として、
大規模イベントやカンファレンスが意味を持つ

大規模イベントを開催するベネフィットはどこにあるのでしょうか?

PR Tableの場合は、関係者を巻き込んで、ゴールまで駆け抜けるという貴重な体験を得ることができ、社内の一体感がより一層強まりました。
そして、会場費・開催費に大きな投資をして必死に回収ができたというのは、言わば一つの事業運営の成功体験ができたと言っても良いと思います。

また、PR Tableのような渋谷で立ち上げたスタートアップが、国際ビジネスセンターとして変貌しつつある虎ノ門ヒルズでイベントをやることで、会社のステージが変わり、よりパブリックな会社へと近づいたという経営者的な実感もあります。

さらに、PR3.0カンファレンスを主催したこと自体が、自社のブランド強化にもなりました。PR文脈以外での知名度が上がり、マーケティングやブランディングなどのジャンルからも、さまざまな会合やイベントに呼んでいただくようになりました。

オフィスを移転することで、会社のステージを変えるというアプローチもありますが、大規模カンファレンスやイベントを実施する方がハマる場合もあるということです。企業の姿勢や行動すべてが良くも悪くもブランディングへとつながっていく時代ですから、大規模イベントやカンファレンスの実施もブランド戦略として十分に意味を持ちます。

一方、カンファレンスを実施することに躊躇する会社は少なくないです。準備は大変ですし、「本当に意味があるのか?」というお声をいただくこともあります。もちろん、誰もがやるべきとは思いませんが、会社のビジョン・ミッションと事業が言行一致していて、本当にそれが正しいと信じられるのであれば検討の余地があるのではないでしょうか。巻き込み型の活発なディスカッションが生まれ、自社にとってのブランディングや社員のエンゲージメント向上など、スタートアップにとってだけでなく、大企業であっても得るものの大きい機会へとつながるはずです。

PROFILE

菅原 弘暁 株式会社PR Table
取締役

2011〜2015年 大手総合PR会社(株)オズマピーアール、内1年間は博報堂 PR戦略局に在籍。その後、国内最大級共創プラットフォームを運営する会社でPR・ブランディングに従事し、2015年9月より(株)PR Tableに参画。2016年12月より現職。事業立ち上げを経て、2018年11月には国内初となるPRの大規模カンファレンス「PR3.0 Conference」をプロデュース。

広告メディア・施設の複合利用例