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イベント・カンファレンス事例 「Plug and Play Japan Summit」
スタートアップと大企業の共創を生み出す世界最大のカンファレンスイベント

イベント概要

名称

Plug and Play Japan Summit

開催期間

2日

利用会場設備

メインホール、ホールA

会場利用イメージ

Plug and Play Japan 藤本あゆみ氏

今、スタートアップと大企業との異文化協業を支援するアクセラレーション(成長支援)が注目を集めはじめています。採択スタートアップDemo Dayイベント「Summit」を開催する世界最大級のベンチャーキャピタル/アクセラレーター、Plug and Play Japanの藤本あゆみさんに、Summit開催の背景からイベント企画、そして次なる打ち手についてお聞きしました。

アクセラレーターはスタートアップと
大企業をつなぐ翻訳者

開催背景

Plug and Playにとって“Demo Day”と呼ばれるSummitの役割とは? 2019年より、虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しようと思った背景は? また、そもそもアクセラレーターが大規模イベントをする意義とは?

ここ2、3年ほど、日本国内でオープンイノベーションが急速に活発化する流れとともに、Plug and Playのようなアクセラレーターの役割が大きくなってきています。しかしながら、現場にはまだまだ課題が存在していて、例えばスタートアップと大企業の間で文化、言語、スピード感にズレがあって互いに歩み寄りきれないことも少なくありません。そこで私たちのような存在が間に入り、コミュニケーションを支援させることが求められているんですね。

そういった活動の中で、情報共有やマッチングを行うための小規模なイベントを数多く開催してきました。ただ“シリコンバレー式のイベント”モデルを日本に持って来るというような単純なものではありません。どうすれば日本の市場にフィットするか、テストマーケティングも含めて年に50回ほど開催してきました。具体的には、投資家を呼ぶイベント、アクセラレーター各社が登壇してビジネスを比較して知ってもらうイベント、スタートアップの文化形成に関するイベントなど、ありとあらゆるイベントを試しました。そのフィードバックから、今後深掘りしていくべきテーマ、今はまだ必要ないテーマなどを判断し、新たなイベント企画を考え続けています。

今回開催したSummitは、2,000人以上が集まり、Plug and Playとしては世界最大のスタートアップDemo Day(プログラム成果発表会)という、大きな意義があるものになりました。前後で開催する小規模イベントの、言わばピークとも言えるイベントなので、規模も注目度も必然的に大きくなります。初年度は700人程度の規模でしたが、今年は二日間で2,000人以上が参加しました。この増加傾向は、業界が順調に成長してきているということの証と言えるかもしれません。

虎ノ門ヒルズで開催するに至った経緯としては様々な理由がありますが、まずひとつはアクセスの良さ。スタートアップのDemo Dayのターゲットは、大企業なので何よりアクセスを重要視したい。アクセスの良さを睨みながらも規模を担保できる会場というのは非常に限られるのです。

他には印象と演出という観点も会場選定に大きく影響しました。例えば都内の各ホテルも検討のテーブルには乗りましたが、結果的にPlug and Playのイベントにはそぐわないと判断しました。オーセンティックすぎるというのがその理由ですね。演台ひとつを見てもクールとは言い難いものがあります。仮に演台やパネルを持ち込んだとしても会場自体の雰囲気とマッチしないんです。ステージにもひらひらとカーテンがついていたりしますから、そういう部分をすべて思い通りにコントロールするには非常に手間とコストがかかりますよね。その点、虎ノ門ヒルズはスタート地点から調整しなくていい分、会場のカスタマイズがしやすいんです。そういう最先端な時代感に見合ったビジュアル面を持っている数少ない候補が虎ノ門ヒルズでした。

そういった会場のセッティングなどは、スタートアップ関連のイベントにおいて非常に重要だと考えています。なぜならスタートアップにとってイベントはブランディングの場でもあるからです。参加者に良いファーストインプレッションを与え、その技術や人材のポテンシャルに関心を寄せてもらう必要があります。私たちのイベントは、そのお手伝いをする場なので気が抜けない部分なんです。

企業とスタートアップのより良いマッチングのためにも
スタートアップのリスト、ピッチ順は絶対に出さない

イベント企画

「大企業とスタートアップの出会い」を生むために、イベントで工夫していることは? またその成果や手応えは?

まずはスタートアップ側と大企業側の目線を揃える会場の雰囲気を作り出すことです。 1つの会話からオープンイノベーションが生まれるので、話すハードルを下げる工夫を凝らしています。例えば、前回のSummitから、スタートアップのブースをすべてスタンド形式にしました。座ってしまうと、上から見る、下から見上げるという構図が出来上がってしまってフェアなコミュニケーションが成立しないことがあります。スタンド形式を取り入れるというのは、海外では比較的当たり前の手法のひとつです。

もちろん会場作りだけでなくプログラムにも工夫があります。Summitで行われるピッチは基本的に3分と決めています。短いと言われることもありますが、いかに3分に濃いメッセージを込め、そのあとに話す機会を設けるかというのが私たちの考え方です。その3分の価値を高めるために、今回のSummitではキーノートのディレクターが事前に「聞きどころ・見どころ」や「イベントをこう使って欲しい」というようなセッションを入れ込んで、3分のピッチとどう向き合うべきかを伝える方法も試してみました。

また、Plug and Playのイベントの特徴の一つでもあるのですが、事前に詳細な情報を出さないようにしています。スタートアップのピッチ順もよく聞かれますが、絶対に出しません。理由は2つあって、ひとつは“その場”に来てもらいたいという強い思いと、もう1つは様々なスタートアップとのセレンディピティのある出会いを提供したいからです。お目当のスタートアップしか見ないというのではなく、今まで知らなかった面白い技術やビジネスモデルに出会い、その場で話をしてもらいたいと思っています。結局のところ、リストを見て事業を吟味するよりも、実際に起業家に会って話をする方が効率的で、その後のスピードが違ってくるんです。

シリコンバレー仕込みの舞台演出が、デモデイの真骨頂「スタートアップによるプレゼン」を引き立てる。

LED照明装置をステージにあげ、プレゼンター1人ひとりを主役に。

参加スタートアップの半分は海外から。日本の大企業たちに海外トレンドを伝えるのも重要な役目。

スマホで簡単にスタートアップのピッチに投票できる仕組みも、大企業とスタートアップを繋ぐのに有効活用されている。

スタンディング形式のブースが、「お客様とベンダー」ではなく、「相談できるパートナー」に変える。

DJによる音楽も、ただのBGMにおわらず、プログラムにメリハリをつけ、会場の一体感を高めた。

今回のSummitは、2,004名の参加者がありました。これはDemo Dayのイベントとしては世界で一番多いんですね。最大規模ではなくて最大。2,000人の大台を目指していたのでこれは嬉しい限りです。ただし、参加者数含めて、イベント後の問い合わせ件数や商談成立数など、KPIはいくらでも設定できますが、今のところはそこまで気にしていません。今、重要視しているのは、当日の会場の雰囲気作りです。次の展開が生まれる空間や仕組みを入れることでどのような効果があるかというようなことです。どれだけDemo Dayが良いものになりうるか、どのような人たちが集まるのかといった部分を中心に検証しています。

具体的には、イベントレジスト社の参加登録者システムを使って、細かい事前アンケートを取るようにしています。また、弊社のプログラムマネージャーたちが各スタートアップにインタビューをして、定性的なデータも毎回収集しています。イベント現場で感じ取れたことで言えば、今回は会場の一体感、熱量が高かったんじゃないかと思います。音響演出としてDJを入れたことはとても大きかったと思います。長い時間ピッチが続くので、会場の雰囲気を鑑みて音楽を変えてもらっていました。

現代的な働き方に則した、
ネットワーキングパーティーを

「Plug and Play Summit」の次の手

Plug and Play JapanおよびSummitの今後の展開について教えてください。

今後企画しているのは、もう少し細かいカテゴリでの仕掛けです。例えば大企業のエグゼクティブ向けネットワーキング。私たちのパートナー企業の、業界を超えた横のつながりをつくり、オープンイノベーションの機運を一気に高め、かつ成果を出すための実行フェーズを創るために、集客力のあるSummit期間中の開催を検討しています。エグゼクティブ向けネットワーキングパーティーは、一般的には夜に行なうものが多いですが、現代的な働き方の時流を捉えると、朝に行うことも検討しています。オープンイノベーションの成功の鍵は、大企業のエグゼクティブクラスのコミットメントにありますので、意義は大きいと睨んでいます。

虎ノ門ヒルズに今後期待したいことでもあるのですが、会場周辺のエリアマップを用意するのはいい考えです。海外のイベントだと、イベント会場のみならず街全体を使ってネットワーキングができるようになっています。虎ノ門ヒルズ内の屋外スペースとしてオーバル広場はこう使えるよ、広場に面している虎ノ門ヒルズカフェはこう拡張できるよ、というような情報があると主催者として助かりますね。また、Summitのスタートアップは半数が海外からですので、彼らへのおもてなしとして、伝統的な和風、ベジタリアンといった趣味嗜好に合わせた飲食店をスマートに薦められたらと思います。

PROFILE

藤本あゆみ Plug and Play Japan

2002年キャリアデザインセンター入社。入社3年目に当時唯一の女性マネージャーに最年少で就任。2007年4月グーグルに転職。代理店渉外職を経て営業マネージャー、人材業界担当統括部長を歴任。「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。その後株式会社お金のデザインを経てPlug and Play Japan株式会社にてマーケティング/PRを担当。

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