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イベント・カンファレンス事例 「BACKSTAGE」
体験型マーケティングについて学び、語り合える場

イベント概要

名称

BACKSTAGE

開催期間

1日

利用会場設備

メインホール、ホールA

会場利用イメージ

イベントレジスト株式会社 代表取締役/CEO ヒラヤマ コウスケ氏

「体験」にフォーカスしたマーケティング・イベント「BACKSTAGE」は、多様なイベントの最新事例を学べるショーケースでありながら、関わる人がミートアップできる場としても存在感を高めています。BACKSTAGE実行委員長でもあるイベントレジスト株式会社のヒラヤマ コウスケ代表取締役/CEOに、開催背景・イベント企画・次なる打ち手についてインタビューしました。

デジタル化が進む現代だからこそ
「体験」の価値は大きい

開催背景

体験型マーケティングに焦点を当て、BACKSTAGEというイベントを開催するに至った経緯を教えてください。

私は日本においてYouTubeの立ち上げに関わっていたのですが、その経験などを通じて世の中の様々なコンテンツがデジタル化していく様子を間近で見てきました。ただ、次第に、誰でも簡単にコピーできてしまうデジタルコンテンツよりも、コピーできないリアルな体験に魅力を感じるようになったんです。そして、その個人的感覚は時代とも同調するように感じました。これからの社会では、デジタル化が進むほどに「体験」の価値が大きくなるだろうと。

当時、日本国内では「リアル」「体験」に着目した人は現れ始めていましたが、イベント、カンファレンスは存在しませんでした。そこで海外にまで足を伸ばして調べてみると、エクスペリエンシャル・マーケティング・サミットというイベントがあったんです。つまり「体験マーケティングのサミット」ですね。面白かったのは、彼らも立上げた15年以上前は、「イベントマーケティングのサミット」というテーマでしたが、途中で「体験型」にシフトしたことでした。

彼らは、スマホがあればどこでも体験が提供され得るというデジタル化の流れを汲んで、その対象をイベントの場所として従来語られがちなホールや会議室だけなく、街中にも広げました。小売ブランドが店頭で行なうような小さなイベントを、体験型マーケティングの1つの形だと謳い、イベント専業でないマーケターも巻き込むようにシフトしていったんです。

私たちがイベントマーケティングと聞くと、想像は狭まってしまい、いかに箱に効率的に人を入れるかといった話に偏りがちです。しかし、イベントの本来の意味は、「出来事や行事すべて」と汎用的なものですし、重要なのは箱の形態とか場所ではなく「提供する体験の価値」ですよね。私は彼らの変化から、体験型マーケティングのポテンシャルや、それについて議論し合う場の必要性を再確認することができました。そして、日本でも同じようなイベントを開催したいと思い、体験マーケティングのカンファレンス&ミートアップ、ネットワーキングをテーマとしたBACKSTAGEの構想をまとめ始めたんです。

そして2016年に虎ノ門ヒルズでBACKSTAGEを初開催しました。虎ノ門ヒルズを選んだ理由はいくつかありますが、ひとつは体験型マーケティングのショーケースになれる「インフラ環境」が整っていたことです。何か新しい仕掛けや実験を会場に導入したいと思っても、安定した回線が整ってなければ何もできません。その点、虎ノ門ヒルズフォーラムは見事に揃っていました。意外に思われるかもしれませんが、比較的大規模な展示会をやるような他会場でも、そういった環境が十分に追いついてないことが多いんです。

また、BACKSTAGEは今までにない形のカンファレンスですので、ゼロからイメージを作り上げていく必要があり、見飽きた会場は避けたかった。虎ノ門エリア自体が「街自体がこれから発展していく最先端なイメージ」を持ち、フォーラム会場のイメージが固定化されていなかったことも選んだポイントです。

あえて不満を言うならば、やはりオフィス環境の中にある会場なので「音が出せない」という部分ですね。まあ普通のカンファレンスだったら十分な音量を出せるのですが、私たちがイベントでやりたいことって普通じゃないんですよ(笑)。あとは会場にスモークを焚いてレーザーを使ったりね。なかなかそういう攻めた演出が許されるカンファレンス会場は少ないので、もし許容してもらえればさらに面白いイベントが実現するはずです。

私たちは、イベントってもっとカッコいいものだよとか、こんなに先進的なカンファレンスができるよっていうのを見せたいので、普通はやらないようなことも選択肢に上がってくるんです。BACKSTAGEの持つ先進的なイメージが、むしろ虎ノ門ヒルズの色となるように毎年工夫を凝らしています。

すぐ真似できるほど実用的なのに今まで見たことがないほどの魅力がある、それが私たちが提供するWOW体験

イベント企画

では、BACKSTAGEを成功せしめた会場作りやプログラム編成とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

BACKSTAGEの会場作りは当然、「体験」というテーマのもとにデザインされています。体験の深さは、記憶の深さ、学習の度合いに基づきます。人から聞いたレストランはすぐ忘れるけど、自分が実際に食べて美味しかったお店の記憶はずっと残るじゃないですか。それはイベントでも同じだと思うんですよね。より深い体験をしていただいて、記憶に刻み込むという仕掛けを用意できるように心がけています。

迫力のある映像表現と参加者のコメント表示が可能な三面スクリーンが、聴衆を惹き込む。

メインホールを二分割し、ステージを斜めに据えた独自の会場レイアウト。施設の高い柔軟性によって実現。

FIRE SIDE CHATエリアでは、セッションを終了した登壇者から、より近い距離でセッションには盛り込まれなかったディテールが語られる。

QRコードを用いたリアルタイムアンケートシステムが会場の一体感を高める。

顔認証入場システム KAOPASSを導入し、チケットレス入場を実現。

東京五輪組織委員が登壇するといった旬のキャスティング。Backstageの真骨頂の一つと言える。

最先端イベントのショーケースにするべく、贅沢なまでに人材・機材が集結。

例えば、メインステージは横長の「三面ディスプレイスクリーン」で圧倒的な映像表現を実現しました。会場の規模から考えて、ここまでやれるのかと思わせるに十分な迫力のステージをお見せできたと思います。私たちのイベントは毎年同じことをやっても意味がないので、あっと驚いてもらえるように毎回違う演出を仕掛けていますね

体験という意味では参加感もすごく重要です。カンファレンス終了後に登壇者と参加者が交流する「FIRE SIDE CHAT」では、登壇者と参加者との質疑応答やディスカッションが白熱するエキサイティングな時間になっています。他には、会場内のリアルタイムで結果を出すアンケートや、ユーザーコメントをライブでディスプレイに表示したりする工夫を通じて、ただの来場者をより能動的な参加者へと一段に引き上げる試みを行なっています。

他にも新しいテクノロジーをいち早く導入して、イベントショーケースとしての意味合いを持たせています。例えば、2018年から使っている「KAOPASS」という入場管理システム。文字通り顔認証のシステムですが、チケットレスで入場受付を済ますことができます。来場者の方に、こういった新しいシステムを体験していただくことも、イベントを盛りあげる上で非常に効果的ですね。

プログラムで大事なのは、参加者を惹きつける登壇者を集めること。出来るだけ多種多様なジャンルから話題性のある人を呼んでいます。例えば2019年のラインナップで言えば、オリンピック委員会の方やカジノ関係の方などですね。とにかく様々なジャンルから、最先端なことに前のめりな方々を集めて、ひとつひとつのセッションを魅力的にしようと心がけています。

最近は、他のイベントでBACKSTAGEと同じ演出が使われているのを見かけるようになりました。例えば、ステージ上のスクリーンの使い方などは多くのイベントで真似されていて素直に嬉しいですね。ほかには、イベント開催前に「どこの誰が参加します」というリストを共有することでプレマッチングできる仕組みや、「誰が会場のどの場所にいます」というのをトラッキングできる仕組みも、他イベントで使われ始めていますね。実際に、顔認証によるチケットレス入場管理システムのKAOPASSはイベント後にすぐ問い合わせがあって、数週間後には他のイベントで採用されていました。

真似も出来ないほど突拍子もないことをやって話題になっても、体験型マーケティング・イベントとしてはあまり意味がありません。ちゃんと実用できるけど誰もやっていないとか、そういう切り口があったのか、ということを提供しないと十分な体験深度が得られないと思うんですね。それこそが私たちが体験型マーケティング・イベントで提供したいWOW体験なんです。

会場の枠に捉われないイベントで、
ネットワーキングを加速する

「BACKSTAGE」の次の手

BACKSTAGEというイベントは今後どのような方向へ向かっていくのでしょうか。

ミートアップは一般的に数十人規模ですよね。もし数千人規模の活発なミートアップが実現できたら、東京・日本でイベントを企画する人たちの価値観をアップデートできる気がしていますね。だから、BACKSTAGEにおいて「ミートアップ・ネットワーキング」っていうのは大事なポイントなんです。そこを今後どう活性化させようかと考えているところです。

ヒントはメイン会場の外にあると思っています。例えば、海外のイベントだと各社のブースで、この後は、街なかのバーでネットワーキング・プチイベントやります、みたいな情報を勝手に配っている。そのようなイベント会場の枠をはみ出た部分が、ミートアップを加速させる気がします。BACKSTAGEから新しいミートアップ、ネットワーキングのあり方を提示していきたいですね。

虎ノ門ヒルズに可能性を感じるのは、色んなメディアやスペースを活用できること。例えば、完成した新駅を、イベント体験の出発点と位置づけ、駅を出た正面の建物を全面スクリーンにして「Welcome!」みたいな見せ方も面白いじゃないですか。また、虎ノ門ヒルズの芝生スペースを使って、同時多発的なイベントを仕掛けるのも良いと思います。

BACKSTAGEに限らず、ビジネスイベント全般で、エンタメ要素を取り込む試みはもっと増えるといいと思っています。実は今回のBACKSTAGEでも、オープニングアクトとして有名なアーティストのアサインができていたんです。でも会場に音の制限があって結局は実現しなかった。ちょっともったいなかった。会場側にも都合があるので仕方ない部分ではありますが、将来的には会場側も進化して、主催者とともにイベント自体のアップデートを図るといいですね。

PROFILE

ヒラヤマ コウスケ イベントレジスト株式会社
代表取締役/CEO

米国でベンチャー企業立ち上げに参画、副代表を務めた後帰国し2000年に Yahoo!JAPAN に入社。
Y!ショッピングのプロデューサとして、Y! ブックスのサービスなどの立ち上げを行う。
2001 年よりマイクロソフトでリッチメディア広告部門の立ち上げ、2007 年からは Google でニューメディア ストラテジー/オペレーションチームマネージャーとして YouTube の広告部門の立ち上げを担当。
その後2009 年にTBS 関連会社goomo 株式会社の設立に参画し、WEB プロデューサ、およびTV 番組プロデューサとしてもメディアの枠を超えた新しい領域を活用したプロモーションを手掛け、2011 年イベレジ創業に参画。

虎ノ門プロジェクトレポート 広告メディア・施設の複合利用例