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イベント・カンファレンス事例 「Innovation Leaders Summit」
大企業と有望なスタートアップのマッチングを図る、
オープンイノベーションの祭典

イベント概要

名称

Innovation Leaders Summit

開催期間

3日

利用会場設備

メインホール、ホールA、ホールB、ミーティングルーム1~4

会場利用イメージ

株式会社プロジェクトニッポン 代表取締役 松谷卓也氏

大企業のアセットと、スタートアップのアイデアやテクノロジーをマッチングし、グローバルイノベーションを生み出すことを目的に発足した「Innovation Leaders Summit(ILS)」。メインの事業提携マッチングプログラム「パワーマッチング」からは、数多くの協業案件が生まれています。ILSを企画・運営するプロジェクトニッポンの松谷卓也CEOに、開催背景・イベント企画・今後の展望についてインタビューしました。

日本には、グローバルなイノベーションを生む
仕組みが足りない

開催背景

「ILS」をスタートさせようと考えた経緯を教えてください。

もともと、日本には起業家を生み出す土壌や環境が足りないという問題意識があり、2004年に起業相談や起業家サポートを中核とするドリームゲートというサービスを立ち上げています。スタートから10年経った節目のタイミングで、今まで培ってきたネットワークや知見を活かして、次に自分はどういう社会貢献ができるかということを改めて考えました。

その際、日本の起業環境を俯瞰すると、グローバルなイノベーションを生まれにくくしているという問題に気がつきました。大学の研究所には技術があり、起業家マインドの旺盛なスタートアップの数も少なくはない。資金や販路を持つ大企業には、オープンイノベーションに乗り出す機運がある。ただ、こうしたプレイヤー同士がぶつ切れになっていて、混じり合うきっかけがないのが課題です。グローバルなイノベーションを創造するには、それぞれの「技術」「起業家マインド」「資金・販路」をつなぎ、マッチングさせる存在が必要だと思いました。

そこで考え出したのが「ILS」です。オープンイノベーションを推進したい大企業と、有望なスタートアップをマッチングさせ、次のステップに進んでもらうための場。1回目は交流会として立ち上げたものの、参加者は800名に上りました。初回なのでトライアル的な位置づけではあったのですが、大企業、スタートアップ双方からのニーズの高まりをひしひしと感じることができ、マッチングイベントの手応えを得ることができたんです。

2回目からは規模を拡大させ、求心力と発信力のある場所で本格的にスタートしたいと考えていました。シンボリックな場所を探すなかで、タイミング良くオープンの情報を知ったのが虎ノ門ヒルズです。

建物を見て、一般的な商業ビルやシティホテルとは違う、洗練されたシンボリックなデザインだと感じました。大企業とスタートアップが出会う場所として、どちらにも偏らないニュートラルなエリアのイメージもちょうど良かった。数千人規模で対応できるキャパシティ、交通アクセスのよさなど、ポジティブな要素がほかにもたくさんあり、すぐにここを会場にしようという思いに至りました。

企業のマッチング数ではなく、
いかに結果につながるかを追いかけている

イベント企画

「ILS」のイベント概要や会場構成について教えてください。

おかげさまで年々規模が大きくなり、2015年には開催期間が2日間に、2017年からは3日間になっています。2018年のILSでは、1万1000人以上の方に来場いただき、大企業は128社、スタートアップは555社が参加しています。参加社数が増えている要因として、特に大企業側の、オープンイノベーションに対する危機感の高まりを感じており、今後も続くだろうと思います。

オープンイノベーションを促すという目的に対して、最も重要なイベントプログラムは、大企業とスタートアップのマッチング商談会です。この商談会をILSでは「パワーマッチング」と銘打ち、大企業が興味を持ったスタートアップと次々と商談を重ねていきます。前回のILSでは、スタートアップ1社につき平均5社の大企業との商談を実施しました(最多24社)。 その結果、2018年度は約2,700件の商談が実施され、その4割ほどが業務提携や資本提携、M&Aにつながるという成果が出ています。このイベントに参加できるスタートアップは、国内外の主要ベンチャーキャピタルなど約100人のILSアドバイザリーボードに推薦された有望スタートアップのみです。スタートアップをスクリーニングすることで、より成果につながるマッチングが生まれています。

多くの大企業は、どのスタートアップと商談するかを事前に検討しますが、会期中に実施する「ベンチャーピッチ」や「ベンチャーショー」で興味を持った企業と商談に入るケースもあります。ベンチャーピッチは、テーマごとにスタートアップを分類し、そのジャンルに関心ある大企業が参加しやすいようにしています。「ベンチャーショー」では、スタートアップのブースを用意して、各企業の製品展示やデモを行うというものです。精度の高いマッチングを実現すべく、スタートアップの魅力を色んな切り口で引き出そうと試みています。

また、商談だけでなくナレッジの共有も積極的に実施しています。たとえばグローバルイノベーションを取り巻くホットトレンドや成長戦略、IPOなどをテーマにしたトークセッションなどもその一つです。ベンチャーキャピタルによる、大企業とスタートアップの協業成功のための事例研究や経験談、資本政策など実践的なセミナーも用意しています。

ILSの会場構成に置ける大きな特徴は、メインコンテンツである「パワーマッチング」を、一番奥の会場である虎ノ門ヒルズ4FのホールBで開催している点でしょう。みなさん、パワーマッチングを最大の目的にされていますから、あえて一番奥に設定して、その手前で実施する各種セッションやスタートアップによるピッチ・展示などにも回遊してもらう狙いがあります。気軽に参加してもらいたいものほど、手前のスペースで実施して、来場者の目に留まりやすくなるよう心がけました。

また、ILSのプログラムは、「パワーマッチング」を軸としつつも、「ベンチャーピッチ」や「ベンチャーショー」、各種トークセッションが同時並行で進みます。また進行に応じて会場のレイアウト変更も頻繁に行われます。例えばホール内を2分割して、片方を海外企業のマッチング会場、もう片方をネットワーキング用の会場にしたり、さらにその会場を細かく分割してピッチイベントを開催したり。どんなタイムテーブルで会場を分割するか、あるいは使わない椅子やテーブルをどこに逃がすか、きめ細かく柔軟な対応が必要です。こうした痒いところに手が届く会場運営が可能なのは、虎ノ門ヒルズフォーラムの細やかな対応力と、柔軟に利用できる設備だからだと思います。そのため郊外型の大規模な展示会場での開催などは考えていません。

国の枠をも越えた、
有望なマッチング創出の場を目指す

「ILS」の今後の展望

今後、「ILS」は何を目指していくのでしょうか。

世界に目を向けても、これだけの数の大企業が参加するスタートアップ向けイベントはありません。海外からの関心も高く、昨年は75社の海外スタートアップが参加しています。これを次回は200社まで増やしたいですね。国際展開という意味では、2019年からJETROとの提携が始まり、5月にはベルリンやロンドン、テルアビブなど世界10都市でILS2019のPRをし、海外スタートアップの参加を促しました。彼らには、日本の大企業が誇るグローバルブランドやアセットをどんどん使ってもらえたら、グローバルイノベーションの新たな展開として面白いと思います。

また、世界と東京をつなぐ上で、在京の大使館も重要になると考えているので、2019年は、MaaS先進国・フィンランドの大使館でILSのサイドイベントを行ないます。大使館内のサウナ施設で、ネットワーキングを行えるなど、フィンランドらしい企画も準備中です。虎ノ門エリアには大使館も多いので徐々に広げ、サブイベントの充実を通じて、海外から企業が渡航しやすい状況を整えたいですね。

国際展開にも積極的な一連の流れは、虎ノ門エリアの都市戦略と、ILSの成長戦略のベクトルがうまく合致したと言えると思います。グローバルなイノベーションの推進には、日本企業同士のマッチングにこだわる必要はありません。大企業とスタートアップの、国の枠さえ越えた高いレベルのマッチング創出を目指して、虎ノ門を舞台に今後も拡げていきたいと考えています。

PROFILE

松谷 卓也 株式会社プロジェクトニッポン 代表取締役

2003年、リクルート在籍時に「日本に起業文化を確立する」というビジョンを掲げ、経済産業省後援事業として「ドリームゲートプロジェクト」を発足。2004年、国からの財政依存なしに自立運営するための運営会社として、株式会社プロジェクトニッポンを設立、代表取締役就任。2007年、「ドリームゲートプロジェクト」の民営化を実現させる。2014年1月、大企業とベンチャーのマッチングにより、日本から世界へ通じるイノベーションを起こす取り組み「イノベーションリーダーズサミット」を発足。昨年の来場者数は1万人を超え、アジア最大級のオープンイノベーションイベントとなっている。

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