PROFILE
宇宙ビジネスの発展と拡大を目的に年次カンファレンス「SPACETIDE]の主宰など産業横断的な活動を実施。またA.T. KearneyのGlobal Space Groupのリーダーとして各国の政府宇宙機関や民間企業向けに経営コンサルティングをおこなう。内閣府 宇宙政策委員会 基本政策部会 委員として宇宙産業振興を支援するなど、多彩に活動中。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)などがある。東京大学工学部卒。
SPACETIDE 2022
2日(別途、別施設で1日開催)
メインホール、ホールA、ロビーラウンジ
一般社団法人SPACETIDE 共同設立者 代表理事兼CEO 石田真康氏
2022年7月19日~21日の3日間にわたり、一般社団法人SPACETIDEにより宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2022」が開催されました。宇宙ビジネス領域に、参加者・登壇者・スポンサーなどとともに新たな潮流(TIDE)をつくるため、リアルでの開催に価値を置いた本イベント。主催の一般社団法人SPACETIDE共同設立者 代表理事 兼CEOの石田真康氏にイベントへの想い、今後の展望についてお話を伺いました。
宇宙ビジネスのハブを目指し、リアルでのイベント開催へ
SPACETIDEのミッションとは? また「SPACETIDE 2022」開催の狙いは?
「宇宙ビジネスの新しい潮流をつくる」ことをミッションに掲げ、2015年から日本初となる民間による宇宙ビジネスカンファレンスを毎年開催してきました。通算7回目の開催となる今回のテーマは「NEW VALUE CREATION」。毎回、各国の動向や産業の状況から半歩進んだコンセプトを設定していますが、本イベントでは、宇宙ビジネスと我々の生活・社会・文化などの関わりから、未来に新しい価値を生み出していくことについて、今まで以上に広い視野で議論できればと考えていました。
SPACETIDEは主催者である私たちだけのものではありません。参加者、登壇者、協賛企業など皆様と一緒に集まって大きな流れをつくる場です。そのためには、リアルに会場で集まってディスカッションができたり、ブースに立ち寄ってモノを手に取りながら見ることができたり、皆様が一堂に会して、直接顔を合わせて、コミュニティの中で物理的につながれる結節点が必要になります。実は、コロナウイルスの感染状況も鑑み、オンラインのみでの開催も検討しましたが、やはりオンラインカンファレンスでは「コンテンツ止まり」で、宇宙ビジネス最前線をお届けする単なる番組になってしまいます。それでは皆様をつなぐハブとしての役割を実現できません。過去2年もリアルとオンラインを組み合わせてきましたし今回のSPACETIDEは、リアルを軸に開催に踏み切りました。
本気の人が集まるコミュニティづくりが鍵
リアル開催に踏み切った今回のイベント。その手応えはどうでしたか?
我々のリアル開催の特徴は、世界のトップランナーで構成される登壇陣であり、その方々や協賛企業とも交流ができることにあるため、チケット価格は安いとは言えません。今回も、全日程参加の一番高価なもので7万円超(定価/早期購入割引あり)という価格を設定しましたが、ここには狙いがあります。
我々には、宇宙ビジネスを人類社会の未来を牽引する産業にしたいという決意があります。そのため、より共に産業をつくっていく想いのある方々に集まっていただきたいと考えます。価格設定によってご参加頂ける層は違いますが、海外の宇宙ビジネスのカンファレンスは10万~20万円が基本となっています。日本にはまだ相当のものがなく、2015年の初開催以来、日本の宇宙産業の成長にあわせてチケット価格を見直してきていますが、今回の設定に対してもお客様がどのように反応されるか集客は多少不安でした。
しかし、ふたを開けてみればイベントは大盛況。リアルで開催する価値を皆さまに感じていただけました。参加数もよかったですし、本気の方々の熱量も感じました。2015年から約7年が経ち、いよいよ日本でも、本気で宇宙ビジネスに取り組む方々のコミュニティができてきたな、と嬉しくなりました。
また、参加者・登壇者のみならず、協賛企業の皆様、ならびに海外から来られた方々の反応からも、リアルでの開催を期待されていたことがひしひしと伝わってきました。海外ではすでに、リアルでのカンファレンス開催が普通という状態に戻っていることもあり、日本でのリアル開催を待ちわびていた方も多かったようです。協賛企業様の商談ブースも盛り上がったと喜びの声も聴かせていただき、リアルでの開催に踏み切ったことに非常に手応えを感じています。
より多くのつながりを生むための開かれた場所として
虎ノ門ヒルズフォーラムを会場に選んだポイントは何ですか?
虎ノ門ヒルズフォーラムを選ばせていただいた理由は、大きく二つあります。一つ目が会場の使い勝手の良さ、二つ目が虎ノ門という立地です。
2019年より使わせていただいております。まず、会場としての機能ですが、700名収容できるメイン会場のキャパシティが魅力です。他にも雰囲気がよかったり、空間の居心地がよかったりする会場もありましたが、私たちにとっては会場の大きさが大切です。2019年時点で、既にSPACETIDEは1日に500名以上が参加をするイベントになっていたのでより成長させたい、インパクトを出したいという希望があり、そう考えると700名が収容できるメイン会場は必須でした。
また、メインホール・サブホール・協賛企業ブース・商談スペースが同一フロアにあることも重要です。ストレスなく参加者や協賛企業の間につながりを生んでいくためにも、階を上下に移動したりすることなく、横の移動だけでカンファレンス参加から商談までを済ませられるようにしたいと思いました。さらにネットワーキングができるようなスペースと、商談スペースまでを、1フロアで完結できるようにしたいです。この条件が満たせる会場は意外と多くありません。今の時代ですと、参加者同士、ブース同士のディスタンスも確保しなければいけませんので、そういった意味でも会場の広さは重要でした。
二つ目の理由が虎ノ門というエリアが持つ価値です。SPACETIDEは、宇宙業界内だけの閉じたコミュニティではなく、他の業界ともつながれるオープンな場を目指しています。その点、様々なビジネスの交差点的な存在である虎ノ門ヒルズの立地は非常にマッチしました。リアルな場所を起点にしたプロモーションが打てれば、SPACETIDE単体では接点が持てないようなビジネスパーソンの方々にも知っていただくきっかけがつくれます。それに駅から会場までが直結していることもありがたいですね。イベントを企画する身としては、最後の最後まで読めないのが天候というファクターです。当日の天気次第で、客足が大きく影響されてしまいます。たとえ雨でもぬれずに会場に着けるのは誰にとっても嬉しいことです。今では虎ノ門ヒルズにはバスターミナルもでき、リムジンバスで空港まで直行できることも大きなポイントですね。海外参加者にとっては圧倒的に参加しやすくなります。
虎ノ門ヒルズフォーラムは、こうした条件にマッチするだけでなく、会場として先進的なイメージも備えています。宇宙ビジネスという新領域に挑戦しているSPACETIDEとの親和性も高く、会場として2019年より活用させていただいています。
世界目線で、トータルな体験価値を磨いていく
SPACETIDEの今後の展開について教えてください。
目下の目標はアジア太平洋地域へと活動を拡大することです。そしていずれはSPACETIDEを起点にして、人類社会の未来を牽引しうるグローバルスタンダードな産業を興していきたいと考えています。日本国内での参加者を増やしていくのはもちろんですが、海外からの参加者も増やしていきたいので、海外目線での企画構想は欠かせません。
その点で見ると、日本以外の国々では、今やオンラインでのイベント開催はすでに限定的です。リアル開催されるカンファレンスに価値を感じる方が海外には多いです。わざわざ国境を越えてでも参加したいと思えるイベント自体の価値と、滞在体験の向上を考えていかなければなりません。たとえば海外のカンファレンスでは、参加者は宿泊も飲食もセットで予約し参加するのが主流です。カンファレンスがおこなわれる会場内の施設であればディスカウントが効いたり、同時期に会場内で別団体のイベントが開催されていたり、さらには参加者による自由な交流企画が催されたり、と参加者がよりカジュアルに交流でき、滞在を楽しめる場が生まれています。この辺りはまだまだ私たちも未着手な分野なので、虎ノ門ヒルズフォーラムおよび森ビルさんとの協働で実現していければありがたいですね。
他にも満足度を高める改善案として、会場に関することで言えば、交流や商談をメインの目的にしている海外の参加者のニーズにも応えられるように、会場内にも簡易なミーティング用の椅子をたくさん配置したり、より詳細な商談のために、個室をフレキシブルに予約できるような仕組みを導入したりといった案も考えられます。また、さらなる滞在体験の向上につなげるためにオプション的なツアーの企画なども考えてみたいですね。夜に集まって飲むだけではなく、近隣の施設などと連携して、見学ツアーや座禅体験などの提供もできれば、より東京でのカンファレンスの価値を生むことができそうです。
おかげさまで、SPACETIDEもアジア最大級と言われる規模にまでになりましたが、目指すところはまだまだ先にあります。IAC(国際宇宙会議)という世界最大の宇宙カンファレンスがあるのですが、そのイベントには5日間で9,000人もの参加者が集まります。70年の歴史がある宇宙業界のオリンピックのような伝統的なベントですが、将来的にはSPACETIDEとしてIACに並び、超えうるようなインパクトを目指しています。
私たちも、まだまだいい意味で固まっていない状態です。開催ごとに新しい要素が次々と生まれてきますし、ステークホルダーの皆様とも共に毎回進化していきたいと考えています。虎ノ門ヒルズフォーラムは、そんな私たちの展開にも毎回応えてくれるポテンシャルと度量の広さがありますね。
宇宙ビジネスの発展と拡大を目的に年次カンファレンス「SPACETIDE]の主宰など産業横断的な活動を実施。またA.T. KearneyのGlobal Space Groupのリーダーとして各国の政府宇宙機関や民間企業向けに経営コンサルティングをおこなう。内閣府 宇宙政策委員会 基本政策部会 委員として宇宙産業振興を支援するなど、多彩に活動中。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)などがある。東京大学工学部卒。